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三戸浜

次の日も、三戸浜の海は優しく佇んでいました。

アメリカン・ブレックファーストの朝食を済ませて、部屋でくつろいだ後、おもむろに海岸近くの通りに出かけました。

そこには、ちらほらと漁師さんらしい初老の方々が歩いていらっしゃいました。

思い切って、『つぶやき岩の秘密』について何かご存じないか、訊いてみました。

ところが、どの方も全く知らない、とおっしゃいます。

男性、女性、誰に尋ねてもご存じありません。

かつてこの土地でNHKがロケをしたことも、新田次郎さんがここを舞台にしてその原作を書いたことも、どなたも一言「知らない。」とのお答えです。

これには大いにがっかりしました。

宿泊費を投じ、労力と時間を費やしてここに来た意味はなんだったのか、と思うと一気に力が抜けていきました。

しかし、諦めてはいられません。

そこで、はたと気が付きました。

村落における知識階級は寺社のご住職や神官です。

寺か神社に行って訊いてみよう、と思いました。

海岸のすぐ近くにある神社は無人のようなので、集落の中にある寺に行こう。

そういえば、民家の狭間に一軒、寺があったな。

あそこに行ってみよう。

福泉寺という寺院でした。

勇気を出して、庫裏(くり)の呼び鈴を押しました。

すると、出て見えたのは年配のご婦人でした。

名刺を出して事情をお話しすると、その方は快く応じてくださいました。

ご婦人はご住職の奥様でした。

ご住職はあいにく不在なので、自分がお話を伺いましょう、とおっしゃってくださいました。

さっそく切り出すと、奥様はこうおっしゃいました。

「ああ。『つぶやき岩の秘密』。知っています。ロケも見ました。」

ほ、ほんとうですか?

「ええ。ずいぶん長い間撮影していました。こんな田舎にはとても珍しいことでしたから、よく覚えています。」

原作者の新田次郎さんは、どうしてここを舞台にされたのでしょうか?

「あ。それは、ここで書かれたからですよ。」

えっ?

こ、ここで書かれたんですか?

「はい。ここに滞在していらっしゃったんです。」

『つぶやき岩の秘密』を書くためにですか?

「いえ。最初は違ったんです。何か他の小説を書くためにいらしたんですけど、そのときに並行して書かれたみたいですよ。」

どこに滞在していらしたんですか?

サーフサイドビレッジですか?

「あれは、当時まだありませんでしたから。保養所ですよ。」

保養所?

「ええ。新潮社の。」

新潮社の保養所?

あるんですか?

ここに?

「はい。あら、前をお通りになりませんでしたか? 神社の隣にあるでしょ。」

ええっ?

「行ってごらんになったらいかがですか? この時期だったら、管理人さんがいらっしゃるはずですよ。いろいろとお訊きになったら、いいですよ。良い方ですから、お話ししてくださるでしょう。」

ありがとうございます。

行ってみます。

やった!

すごい事実がわかりました。

新田次郎さんは、この三戸浜で『つぶやき岩の秘密』を書いたのか。

新潮社の保養所で。

驚いた!

お寺に行って良かった。

えーと、神社の隣、神社の隣。

あ、これか。

なんなのかなあ、この建物は、と思っていたけど、これが。

ここで『つぶやき岩の秘密』が産まれたのか。

新潮社

広い敷地に建つ瀟酒(しょうしゃ)な木造家屋の門には、確かにここが新潮社の保養所であることを示す大きな表札がはめ込んでありました。

期待に胸を躍らせながら、インターホンのボタンを押しました。




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Mr.NAO

Author:Mr.NAO
東京都港区出身 
男性 
水瓶座

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