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日の出

やがて、何事もなかったかのように、朝陽(あさひ)が昇って参りました。

ご住職は、滝のほとりの土の穴にお隠しした観音様を一刻も早く寺の本堂にお戻ししなければ、と思い、村の衆に呼びかけて寺に来てもらいました。

村の衆は寺もご住職も無事だったことをたいそう喜び、みんなで声を上げながら滝へと向かいました。

ご住職が読経をする中、穴を覆(おお)った白い岩が引き上げられますと、観音様のお姿が現れました。

観音様はかすり傷ひとつない、それはお健(すこ)やかなお顔をしていらっしゃいました。

そして、静かに静かに観音様を持ち上げ、大きな布でお包みして、さあ寺にお運びしようとした、そのときでございます。

村の衆の一人が、急に大声を出しました。

「・・・・お、和尚様! 和尚様! ちょ、ちょっと、来てくだせえ!」

ご住職は読経をやめて穴の方へ参りました。

「・・・ん? どうした?」

男は、穴の中を指差しました。

「こ、これを・・・・。」

死んだコウ

穴の中をのぞきこんだご住職は、びっくりいたしました。

なんと、そこには、いなくなったコウが横たわっておったのでございます。

「コウ! ・・・は、早く、出してやるんだ。」

男は穴に飛び降り、そっとコウを引き上げましたが、コウはもはや息をしておりませんでした。

きれいな茶色と白だったコウの体は、まるで別の犬のように灰色になり、体は灰にまみれ、あちこちにやけどの跡がございました。

その姿に、ご住職は手を合わせながら涙を流しました。

なんとも不思議なことでございました。

白い岩で覆われていたこの穴の中に、コウがどうやって入ることができたのか。

だいいち、あの凄まじい火の中をどうやってくぐり抜けて山から戻って来たのか。

誰にもわかりませんでした。

「・・・・この犬は、犬ではない。・・・人間に火事を知らせ、観音様を土中にお隠ししろと命じ、自(みずか)らは燃え盛る山中に踏み込んで、たぶん山の神様に島の無事(ぶじ)を祈願し、さらにここに立ち戻り、その身を以て観音様をお守りした・・・・。この犬は、神様のお使いに相違(そうい)ない。・・・なんと、ありがたいことだ。・・・・ありがたい。・・・・ありがたい。・・・南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)、南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛・・・・・・。」

塚

ご住職は、村の衆とともに、滝のほとりにコウを葬り、そこに塚を作って手厚く弔(とむら)いました。

その塚は「犬塚(いぬづか)」と呼ばれて、いつまでもいつまでも人々に拝まれ続けたということでございます。

それ以来、島では山火事が起きても、絶対に麓まで火が降りてくることはない、と申します。

また、犬塚が建てられてから、滝の水は再び豊かさを取り戻し、今でもなお島を潤(うるお)し続けておるそうでございます。

滝の水


                                      了

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Mr.NAO

Author:Mr.NAO
東京都港区出身 
男性 
水瓶座

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