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滝

遠い昔、瀬戸内の島でのお話でございます。

その島にはいくつも山がございましたが、その山のひとつに滝がございました。

近くにある他の島々には、どこにも滝などございませんでしたので、島は「滝の島」と呼ばれておりました。

滝は夏になっても水が豊かで、一度も涸(か)れたことがございませんでした。

だから、滝から流れ出る水はお百姓(ひゃくしょう)たちにとって、それは大切な水でございました。

島ではミカンと米が作られておりましたが、それらの作物はすべてこの滝から流れる川の水で育っていたのでございます。

この滝は、夕方になると、水が流れ落ちる滝のてっぺんの向こうの方にお天道様(てんとうさま)が入って行かれるように見えるところから、村人たちは「入り日の滝」と呼んでおりました。

その滝のすぐそばの、山のふもとに小さな寺がございました。

寺

寺には歳を取ったご住職が独りで住んでいて、ご本尊の観音様(かんのんさま)にお仕えしておりました。

ご住職は、子どもの頃、この寺にやって来て先代のご住職のもとで修行(しゅぎょう)をいたしましたが、その先代が亡くなってからは、ずうっと独(ひと)りで寺を守っておりました。

夜明け前に起きて、まず境内(けいだい)の掃除をし、本堂を清め、お勤めをし、一汁一菜(いちじゅういっさい)のご飯をいただき、そしてその後、島の中を歩いて村の衆と話をする、というのがご住職の毎日でございました。

ご住職は大変に穏(おだ)やかな人で、そのうえとても物知りでございましたので、村人たちは何かあると必ずご住職に相談したのでございます。

どんなに些細(ささい)な相談事にも、ご住職は親身(しんみ)になって答えましたので、村人たちはご住職を心から慕(した)っておりました。

夫婦の仲が良くないとか、子どもがケンカをするとか、嫁と姑(しゅうとめ)がうまくいかないとか、こんなに小さな島の村にも、相談事は絶え間なくございまして、一日かけて村を廻ると、ご住職はずいぶんと疲れてしまうのでございました。

そんなある日のことでございます。

そろそろ暗くなり始めた夕方、ご住職が村を廻り終えて寺に帰ろうと、滝の方に伸びる川べりの小道を歩いておりますと、草むらが一瞬ゴソゴソッと揺れたように見えたのでございます。

これが村の衆なら途端(とたん)に腰を抜かして、やれ化け物だ、物の怪(もののけ)だとぶるぶる震えて大騒ぎをするところでございますが、ご住職は肝が据(す)わっておりますので、ピタリとその場に立ち止まってそちらの方向に鋭い眼差(まなざ)しを放ったのでございます。

しばらくそうしておりましたが、もう草むらは動きませんでしたので、ご住職は気のせいであったかと思い、再び歩き出すことにいたしました。

と、またもや草むらがゴソゴソッと揺れましたので、ご住職は足を止め、手に数珠(じゅず)をかけて合掌したかと思いますと、草むらに向かって、えいっとばかりに念じました。

「・・・何やつか存ぜぬが、出て参るが良い。場合によっては、法力(ほうりき)によって成敗(せいばい)してくれるわ・・・・。」

すると、草むらがいっそう激しく揺れましたので、ご住職は心の中で叫んだのでございます。

「・・・・喝(かつ)!」

次の瞬間、何かが草むらから飛び出して参りました。

ご住職は両の眼(まなこ)をカッと見開いて、それを睨(にら)みつけました。

ところが、草むらから飛び出して来たそれを目にするや否(いな)や、ご住職の面(おもて)は嬉(うれ)しそうな笑顔に変わったのでございます。

それは、小さなかわいい子犬だったのでございました。

子犬


                                    つづく












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Mr.NAO

Author:Mr.NAO
東京都港区出身 
男性 
水瓶座

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