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合格発表
 
「あった!」

伊藤さんは、手にした受験票と同じ番号を見つけると、思わずそう叫びました。

「良かった!」

奥さんはハンカチで目頭を押さえました。

受験した息子の公平(こうへい)クンは、この場にいません。

高熱のため、入院しているのです。

インフルエンザでした。

新型ではなかったのが不幸中の幸いでしたが、もともと体が強い方ではなかったので熱が下がらず、医師の指示で入院し、点滴を受けているのです。

公平クンは、この高校の入学試験を受ける2日前に発熱しました。

受験当日は、同行した母の手にすがるようにして試験会場に出かけました。

悪寒と震え、激しい頭痛と吐き気に必死に耐えながら、フラフラの状態で試験に臨みました。

試験後は、迎えに来たタクシーに倒れ込むようにして乗り込み、母に抱えられながら帰宅しました。

この高校は、公平クンにとって第一希望の公立校でした。

しかし、彼自身、試験で答案に何を書いたかさえもよく覚えていないという始末でした。

ですから、伊藤さん夫妻は、まず合格していないだろうと思い、合格発表会場に着くと「補欠合格者」の掲示の方から見ていきました。

そこには公平クンの番号はありませんでした。

両親は、やっぱりムリだったかと肩を落として帰ろうとしました。

ところが、息子と同じくらいの成績の同級生が合格して手続き書類をもらっているのを目にしました。

あの子が受かるなら、うちの子も・・・・。

そこで、もしやと思って引き返したのです。

公平クンは第二希望の私立にはすでに合格していましたから、伊藤さんは入学金の工面をしなければいけない、と準備を始めようとしていました。

「いやあ、うちの息子もたいしたもんだなあ。」

病院に向かう電車の中でしみじみそう言うと、奥さんは静かに答えました。

「あなたの子ですもの。あたしは合格してるって思ってたわよ。」

病室に入ると、点滴の針を腕に刺したまま、公平クンは無心に眠っていました。

奥さんが額に手を当ててみました。

もう熱は下がっているようです。

両親は、息子が目を覚ますまで待ちました。

ベッドの傍らに座って、息子の顔を見ながら、無言で待ちました。

30分ほどたちました。

公平クンがゆっくりと目を開きました。

伊藤さんは、合格手続き書類の封筒を両手で公平クンの顔のそばに掲げました。

「・・・受かったぞ。」

公平クンはニコッと笑うと、か細い声で言いました。

「・・・やったね・・・・・。」

再びまどろんでいく息子を前に、伊藤さんの瞳から涙があふれました。


                                      つづく



(写真は、googleさんから拝借させていただきました。)
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Mr.NAO

Author:Mr.NAO
東京都港区出身 
男性 
水瓶座

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