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7月26日(木)の毎日新聞朝刊に出ていた玉木研二さんの『そして名画があった』で、豊田四郎監督による『駅前旅館』が扱われていましたので、ご紹介します。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

この年、東京は空梅雨だったという。

1958(昭和38)年7月、毎日新聞夕刊が面白い写真企画を連載した。

復興したビル街屋上からの新光景。

題して「東京の屋根の下」。

往年のフランス映画「巴里(パリ)の屋根の下」をもじったのだろう。

将来のスターを夢見て夜の有楽町、きらびやかなネオンを眼下に、日劇屋上で激しいレッスンを続けるレオタード姿の女たち。

建造中の東京タワー。

はるかな天空へ向けて鉄骨を組み立てていくトビたち。

見るだけで足がすくむ写真は、ヘリコプターから撮っている。

数寄屋橋ぎわの9階屋上ビアガーデンは連日満員。

女性客がぐんぐん増えているのが一因だ。

女性がビール、男性がジュースという「アベック」も珍しくないーーと今書けば失笑を買うだろうが、新旧の感覚が入れ替わっていた、あの時代の雰囲気が伝わってくるようだ。

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この7月、東宝系で公開された「駅前旅館」(監督・豊田四郎)は、そんな流れに意地を見せた、古い旅館の番頭らの物語である。

原作は井伏鱒二、舞台は上野かいわい。

駅前旅館井伏鱒二

人々が旅行の余裕も取り戻した時代だ。

この道一筋の番頭次平に森繁久弥、けれんみたっぷりの番頭仲間に伴淳三郎、旅行会社添乗員にフランキー堺、次平を慕う飲み屋のおかみに淡島千景という芸達者の配役。

修学旅行、職場の慰安旅行など、団体がラッシュのように来ては去りの大忙しの中で、当時の世相風俗、上野駅前の情景が画面に映し出される。

高層ビル林立の今から見れば、あのころの東京の空の広さは驚くばかりだ。

古さ(修学旅行生たちが宿へ米を持参している)と新しさ(女子高校生らの奔放さなど)が混然と描かれる。

戦後復興から成長へ、時代は活気づいていた。

そして番頭次へ次平は次第に「用のない」立場に追いやられつつあった。

彼は路上を行き交う客の呼び込み、さばきに卓抜した技を持ち、誇っていた。

だが旅行会社の指定旅館になり、組まれたスケジュールに従ってさばいていれば安泰な世になったのだ。

そんな流儀に反発する次平に、旅館の経営者夫婦があきれたように言う。

「今日日(きょうび)、団体さんこそお客サマサマなんだ」。

「ビジネス、ビジネス。番頭さんは単なる事務員さんでいいんですよ」。

上野駅では、なじみ客の出迎えに行った次平が、業者仲間が打ってくれた符丁(ふちょう)のような連絡電報を持っていたために、理解できない新世代の巡査に怪しまれる。

これも象徴的な場面だ。

電文は「ソハヤマタオ一メ三イマノタ」。

「ソハ」は名産のソバにちなんで長野県のこと。

「ヤマタ」は山田、「オ一」は男性1名、「メ三」は女性3名、イマノタ(ママ)は今列車に乗ったの意。

節約のため電文を極力縮めるこの世界の工夫だった。

ケータイ万能の今の世にはあり得ない。

いろんな騒動の後で、次平はまだ自分を必要としてくれる旅館を求めて上野を旅立つ。

ついてくる飲み屋のおかみ。

この森繁、淡島コンビが醸し出す情感は、豊田監督が先に大阪を舞台に同じ2人で撮った「夫婦善哉(めおとぜんざい)」(原作・織田作之助)を思い起こさせる。

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法善寺横丁を上野に置き換えたという感じである。

「駅前旅館」の成功から3年後の1961年夏、原作のないオリジナル作品「喜劇 駅前団地」(監督・久松静児)が公開され、「駅前」シリーズが走り出す。

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高度経済成長期に重なって日本社会の喜怒哀楽を映し、風刺する長期シリーズとなった。

「駅前団地」は東京郊外に広がり始めた団地造成をめぐるコメディー。

小田急線百合ケ丘駅や西生田駅(現読売ランド前駅)周辺の起伏豊かな丘陵地や駅前の店、共同住宅が点在する風景などがふんだんに出てくる。

この辺りを知る人には隔世の感ひしひしといったところだろう。

つい昨日のようで、遠い幻影のような昔である。

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スカイツリーの登場が象徴する、時代の衣替えを迎えた今、「駅前シリーズ」は色々なことを教えてくれます。

『三丁目の夕日』などが「昭和レトロブーム」と呼べるような現象を生んでいますが、正真正銘、あの時代に作られた映画には本物ならではの生きたテーマが息付いています。

新しいものに席巻される古いもの。

それらは「過去の遺物」と呼ばれながら消えていきました。

ものばかりではありません。

人もです。

便利、手軽、重宝、安価などが追求され、手間ひま、じっくり、職人技、熟練といったものは、極々一部のみを残して何処かへ行ってしまいました。

例えば、家電によって日常は飛躍的にラクで快適なものになっていきました。

しかし、その一方で、殆ど料理をしない主婦が増えたとか。

うっかりすると「母の味」がレトルトカレーという、寂しく哀しい時代になってしまいました。

そんな中、地球を大事にする動きが出てきたことは嬉しい限りです。

昭和30年代の功罪は真に大きかったのです。

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Mr.NAO

Author:Mr.NAO
東京都港区出身 
男性 
水瓶座

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