2010/05/24 07:37:54
8
今日も疲れたなぁ。
あいつ、もう寝てるか?
「あれ? まだ起きてんの?」
「・・・ああ。」
「なに? 仕事かよ。」
「終わんなかったんだよ。残業できないからさ。」
「大変だな。」
「研修のレポート。明日まで。・・・ファァァ~。」
勇、眠そう。
「なんか、食うか?」
「え? うーん。そうだな。」
「売れ残り、もらってきた。」
「お。チョリソ・ドッグ? いいじゃん。オレ、好きなんだよ。」
「そう思ってさ。4つも取ってきた。ほら、いろんなソースも。」
「マジで? うれしー。よーし。真夜中の活力源。」
「オレ、ビール飲むけど。いる?」
「うーん。おおかた書いたから、飲んでもだいじょぶだろ。」
「よーし。・・・・・・はい。じゃ、カンパーイ。」
「おー。・・・うまぁーい。」
「・・・んー。仕事の後のビール、最高。はぁ~。じゃ、これ。」
「お。ありがと。うまそー。・・・うん。うまい。ちょうどいいピリカラ。」
「シカゴ・カフェ自慢の逸品だからな。」
ルームパートナーの矢崎勇作は、能力が高いうえに大変なマジメ人間、しかもユーモアのセンスもある。
将来、出世まちがいない。
そう思わせる男だ。
幸は、自分もこんなふうになりたいのかも、と思うこともあった。
しかし、いや、そうじゃないのかも、とも思った。
「今日さ、オレが着替えてたらさ、変なジイサンがいきなり入ってきて、服、脱いでんだよ。」
「え? なにそれ。エレベーターんとこで?」
「そう。で、その人、お掃除おじさんだったんだけど、今まで休んでたんだって。入院して。」
「ふうーん。病弱なのかね。いくつくらいなんだよ。」
「70ぐらいかなぁ。」
「じゃあ、年金、出てるだろ。なんで働かなきゃなんないんだろな。年金の額、少ないのかな。あ、奥さんも病気とか?」
「知らねーよ。今日会ったばっかりなんだから。」
「あ、そっか。」
「だけどさ、なんか、変なこと、言うんだよな。」
「なに? そのジイサンが?」
「うん。」
「どんなこと?」
「佐藤さんたちとうまくいってるか、とか。」
「佐藤さんって、障害がある人だっけ?」
「ああ。言ってる意味がよくわかんねーんだよなぁ。いまひとつ。」
オレ、うまくやってるつもりだけどなぁ。
それとも、オレ、無意識のうちに、あの人たちの気に障るようなこと、しちゃってんのかなぁ。
オレ、小学校,中学校と、特殊学級がなかったし、高校でも大学でも障害を持つ人間は周りにいなかった。
だから、付き合いかたが要領を得てないんだよなぁ、きっと。
「だけどさ、ケンカなんかしたことないんだろ? その、佐藤さんたちとさ。」
「うん。」
「じゃあ、問題ないんじゃないの? そのジイサンの取り越し苦労じゃない? 年寄りの冷や水だよ。え? そう言わないか、そういうの。ははは。」
ま、そうならいいんだけどさぁ。
つづく
今日も疲れたなぁ。
あいつ、もう寝てるか?
「あれ? まだ起きてんの?」
「・・・ああ。」
「なに? 仕事かよ。」
「終わんなかったんだよ。残業できないからさ。」
「大変だな。」
「研修のレポート。明日まで。・・・ファァァ~。」
勇、眠そう。
「なんか、食うか?」
「え? うーん。そうだな。」
「売れ残り、もらってきた。」
「お。チョリソ・ドッグ? いいじゃん。オレ、好きなんだよ。」
「そう思ってさ。4つも取ってきた。ほら、いろんなソースも。」
「マジで? うれしー。よーし。真夜中の活力源。」
「オレ、ビール飲むけど。いる?」
「うーん。おおかた書いたから、飲んでもだいじょぶだろ。」
「よーし。・・・・・・はい。じゃ、カンパーイ。」
「おー。・・・うまぁーい。」
「・・・んー。仕事の後のビール、最高。はぁ~。じゃ、これ。」
「お。ありがと。うまそー。・・・うん。うまい。ちょうどいいピリカラ。」
「シカゴ・カフェ自慢の逸品だからな。」
ルームパートナーの矢崎勇作は、能力が高いうえに大変なマジメ人間、しかもユーモアのセンスもある。
将来、出世まちがいない。
そう思わせる男だ。
幸は、自分もこんなふうになりたいのかも、と思うこともあった。
しかし、いや、そうじゃないのかも、とも思った。
「今日さ、オレが着替えてたらさ、変なジイサンがいきなり入ってきて、服、脱いでんだよ。」
「え? なにそれ。エレベーターんとこで?」
「そう。で、その人、お掃除おじさんだったんだけど、今まで休んでたんだって。入院して。」
「ふうーん。病弱なのかね。いくつくらいなんだよ。」
「70ぐらいかなぁ。」
「じゃあ、年金、出てるだろ。なんで働かなきゃなんないんだろな。年金の額、少ないのかな。あ、奥さんも病気とか?」
「知らねーよ。今日会ったばっかりなんだから。」
「あ、そっか。」
「だけどさ、なんか、変なこと、言うんだよな。」
「なに? そのジイサンが?」
「うん。」
「どんなこと?」
「佐藤さんたちとうまくいってるか、とか。」
「佐藤さんって、障害がある人だっけ?」
「ああ。言ってる意味がよくわかんねーんだよなぁ。いまひとつ。」
オレ、うまくやってるつもりだけどなぁ。
それとも、オレ、無意識のうちに、あの人たちの気に障るようなこと、しちゃってんのかなぁ。
オレ、小学校,中学校と、特殊学級がなかったし、高校でも大学でも障害を持つ人間は周りにいなかった。
だから、付き合いかたが要領を得てないんだよなぁ、きっと。
「だけどさ、ケンカなんかしたことないんだろ? その、佐藤さんたちとさ。」
「うん。」
「じゃあ、問題ないんじゃないの? そのジイサンの取り越し苦労じゃない? 年寄りの冷や水だよ。え? そう言わないか、そういうの。ははは。」
ま、そうならいいんだけどさぁ。
つづく
スポンサーサイト
|ホーム|