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スーツ横向き

やがて、公平クンは順調に快復し、退院。

卒業式を経て春休みを元気に過ごし、いよいよ晴れて入学式の当日を迎えました。

伝統あるその高校は自由な校風が有名で制服がなかったので、公平クンはダークスーツ姿で式に出席しました。

入学式の中心は、「入学許可」です。

ついこのあいだ卒業式をおこなった中学校の体育館の2倍はあろうかと思われるほど大きな高校の体育館で、名前を呼ばれた新入生が返事をしながら次々に起立していきます。

公平クンも呼名(こめい)を受け、「はい。」と言って立ちました。

その幾分幼くも凛々(りり)しく男らしい姿を後ろから見ていて、伊藤さんと奥さんは息子が産まれてから今日までの永かった日々を思い出し、胸が熱くなりました。

「良かったなあ、公平。」

式次第の後、学級担任の紹介がありました。

公平クンのクラス、B組の担任は英語の女性教師でした。

さらにその後、新入生は各教室で初めてのクラスミーティング、保護者は式場に残って説明会、それらが終わると校庭でクラスごとに記念撮影をして散会です。

高校校舎

帰り際に校舎を見上げながら、伊藤さんは公平クンに尋ねました。

「担任の先生、どんな話、した?」

「え? う~ん・・・・。」

公平クンは首をかしげています。

「おまえ、B組だから、あの女の先生だろ? 英語の。良かったじゃないか、英語、得意なんだから。」

「・・・うん。ま、それはいいんだけど・・・・。」

校門を出ると、公平クンは歩きながらとつとつと話し始めました。

担任の中年女性教諭は、次のようなことを話したそうです。

あたくしは、英語科の十文字公江(じゅうもんじきみえ)と申します。

まずは、ご入学おめでとうございます。

この伝統ある難関校によく入りましたね。

しかし、いつまでも喜んでばかりいてもらっては困ります。

明日から、エリ-トになるためにどんどんお勉強をしてもらいます。

そして、なにがなんでも東大に入っていただきます。

あたくしは、そのためにはけっして手段を選びません。

あたくしの担当になったからには、どうぞそのおつもりでいらしてください。

あたくしの言うことを聞いてそのとおりにしていれば、絶対に東大に入れます。

では、明日から、東大を目指して寸暇(すんか)を惜しみ、一分一秒をもムダにせず、みなさんでお勉強してまいりましょう。

「・・・へえ。そりゃ、勇ましいな。じゃあ、おまえも・・・・。」

そこまで言った伊藤さんは、息子の顔を見て言葉を呑み込みました。

公平クンは、視線をアスファルトの地面にさまよわせながら、眉間に深いシワを寄せていたのです。

車道を激しく往来するクルマの群れが、一瞬、飛び交う無生物のように感じられました。

公平クンの細くて白いうなじが、かすかに震えているように見えました。


                                      つづく



(写真は、googleさんから拝借させていただきました。)



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Mr.NAO

Author:Mr.NAO
東京都港区出身 
男性 
水瓶座

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